行政書士を含む資格者事務所のホームページなどでは、その事務所の実績や過去の取扱実例を公表している事務所があります。この点については、私たち行政書士の内部でも、さまざまな議論があります。
これを肯定する側としては、「依頼者の承諾を受けていれば問題はない」とか「個人を特定できないように抽象化すれば構わない」という意見などがあり、実際に、実績や過去の取扱実例を公表している事務所もあります。
たしかに、このような考え方も、傾聴に値するものではあります。しかし、私たち行政書士は、行政書士法に基づいて、守秘義務が課せられています。職務上知り得た秘密は、絶対に守らなければなりません。また、その他にも、行政書士倫理規程や関係法規等においても、行政書士としての高い品位や倫理観を求められています。
私たちが取り扱う仕事は、依頼者の方の高度なプライバシーに、本当に深く関わるものばかりです。依頼者の方のプライバシーに関わることであっても、それらをお聞きしなければ、たとえば、「ビザを取得する」であるとか、「許可を受ける」であるとか、依頼者の抱えている問題を解決して、具体的な成果を上げることはできません。
私は、依頼者の方が、安心して、自らのプライバシーに関わることをお話できるような環境を作ることが最も大事であり、それは、「絶対的な安心感である」と考えています。「この先生に話しても大丈夫」、「この先生から話が漏れることは絶対ない」、「話したことを必ずプラスに役立ててくれる」、だから、安心して話ができる、そのように依頼者の方に感じてもらえる環境を作ることが、私たちに求められていると考えています。
私は、行政書士の仕事というのは、依頼者の利益を中心に考える必要があると思います。実績や過去の取扱実例を公表したほうが、事務所のPRには役立ちます。しかし、職務上知り得た依頼者に関わる情報は、徹底して管理して、これを外部に出さないという強い姿勢を貫くことが、「絶対的な安心感」であり、このことが、依頼者の利益に繋がると考えています。私は、行政書士として10年以上の経験がありますから、他の行政書士や資格者事務所と差別化するためにも、公表したい実績や取扱実例などは豊富にあります。通常の商売・商業でしたら、これらを、大いにアピールするべきなのでしょう。しかし、私たちの仕事は、何よりも「依頼者の利益を守る」、その結果が「事務所の利益に繋がる」という、この順番で、仕事を進めていかなければならないと考えています。たとえば、依頼者の方へ郵便物を発送するときなどは、ご希望があれば、差出人が”行政書士事務所”であることが分からないように工夫するなど、細かな点まで徹底しています。
冒頭にも、お話しましたとおり、行政書士の内部でも、さまざまな議論があります。もちろん、私のこのような考え方が、唯一正しい考え方であるとは思っていません。いろいろな価値観や考え方があってよいと思います。ただ、少なくとも、私たちの事務所では、このような考え方をもって、実績・取扱実例を公表していません。このような考え方のもとで、依頼者の方からのご相談に応じ、ご依頼をお受けしています。
実績や過去の取扱実例を公表しない代わりということではありませんが、私たちの事務所では、“行政書士直通電話”として、ホームページ上に、私の携帯電話番号を公表しています。“行政書士直通電話”ですので、事務所のアシスタントや事務員ではなく、私自身が直接電話に出ます。打ち合わせのときなど、電話に出られないときもありますが、私と直接お話をされたいことがありましたら、ご遠慮なく、この“行政書士直通電話”まで、ご連絡ください。
それから、事務所の雰囲気や様子などが分かるように、アシスタントたちが、ブログ(行政書士秘書日記)を綴っています。受任している案件のこと、申請結果なども、ほんのごく一部ですが、この中で、紹介しています。
文:佐藤英明 |